矢車通り~オリジナル小説~

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2001-10-01から1ヶ月間の記事一覧

義父母

山本詩保は軽い足取りで2階に上がった。廊下の突き当たりが義父母の寝室だ。10畳の部屋にベットが二つ並んでいる。入って右手はクローゼット、左手に義母・知佳子の鏡台がある。義母は今、詩保の息子で、生後6ヶ月の一義をお風呂に入れている。洗顔クリ…

あなたを見つめて(2)20枚

由莉葉は高校を出たら就職するつもりでいる。父親の遺族年金が出るのは由莉葉が18歳になるまでで、さ来年からは出ない。家計は一気に苦しくなるはずだ。母親は進学しても良いと言っているが、特に勉強を続けたいことがあるわけでもない。ここでアピールし…

あなたを見つめて(1)22枚

空気が動いた。 長倉由莉葉は背後を振り返った。小柄な吉田和子の頭上からかぶさるように、中年男が怒鳴りつけている。男の四角い顔は血が上って、赤くなっている。和子は耐えていた。由莉葉は男の視線を受け止めるようにして、和子と男の間に割り込んだ。男…

ひとときだけは……

私がそのニュースを聞いたのは、会社の昼休みに女子社員で集まってお弁当を食べているときだった。 「長期ドラマのロケ地がこの町に選ばれたんですって、聞いた? 水原さん」 「柳勇馬主演の近代ものってうわさよね、伏見さん」私はとっさに話を合わせるため…