矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

2007-07-12から1日間の記事一覧

離れない(仮)18

18 純子が死んでから、どうしていたのか、僕は覚えていない。 何日か前に意識がはっきりした。 純子の追悼をするために、廃ビルの屋上に来た。いつか、純子と二人ではまり込んでいた場所に一人で座る。 夜景がきれいだ。 汚いものは闇に隠され、明るく輝く…

離れない(仮)17

17 着信音は純子の物だった。すぐに出る。スピーカーから出る音は、苦しそうな呼吸音だった。 「どこだ、純子」 「先生、ごめん。電話、しちゃった」 「いいから、純子、場所を言うんだ」 肩を叩かれて振り向くと、『電話番号を教えろ』と書かれた紙が目に…

離れない(仮)16

16 九時を回っても純子が帰って来ない。 一緒に暮らし始めてから、こんなことはなかった。僕は胸騒ぎがして何も手につかない。電話機を見つめながら連絡を待つ。こちらからは何度も掛けたが、電源が切られているか電波が届かないところにいるとアナウンス…