矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

2012-01-01から1年間の記事一覧

稲妻お雪 四の参

「やいっ、お前が家康か。何が東海一の弓取りだ。家臣の口のきき方の躾けも出来ねえ大将は、大将として認めねえからそう思え」 家康はお雪の剣幕にはさすがに驚いたようだが、大久保から事情を聞いてからからと笑い出した。 「わっははは。あの頭痛の種であ…

稲妻お雪 四の弐

質素ながら堅牢な城である。もちろんまだ天守は無い。安土に信長が城を築くのは、これから後四、五年待たなければならい。お雪には専門的な縄張りはわからないが、守りの固いことだけは分かる。 「どうじゃな。そなた我がお館様の城作りの思いが」 武士が少…

稲妻お雪 四の壱

それから二日後、お雪の姿が駿府城の城門に現われた。 お雪は門を警備している小者に声をかけた。 「おい、おっさん。家康に会いたいんだけど案内してよ」 聞いた小者の怒るまいことか。六尺棒を振り上げお雪に殴りかかった。 「随分乱暴な所だねえ。三河と…

稲妻お雪 参の四

「越後の乱波が何用あって家康の所へ参る。我らは徳川に遺恨ある者、容易にここを通すと思うてか」 「それそれ、そこが相談のし所ともうすもの。貴公等の事情を分かりなが、危うい橋を渡って来たのじゃ。土産を用意せんで何とする」 そういいながら三太夫は…

稲妻お雪 参の参

「おーい、御坊達。そのようよな小童を相手にせず、これを見てくれ」 三太夫は大声で叫びながら、砂金を見せるように袋を振った。 「チェ。余計なオヤジが余計な所に現れやがった。これから面白くなろうって矢先によ」 お雪は又一人、荒法師を血祭りに上げな…

稲妻お雪 参の弐

「物事おまえさんの思う通りに行けば目出度いがな」 善介は溜息をついて、それでも脇差をひきぬいた。 「目出度いのはおまえ達じゃ。この人数にたった二人で歯向かうとな。さいわい此処は寺じゃ。僧もおるし墓も腐るほどあるぞ。安心して冥土へ行きくされ」 …

稲妻お雪 参の壱

お雪を見て荒法師どもは怒るまいことか、善介の襟首を締め上げ、今にも縊り殺す勢いである。 「まだ子供ではないか。かような者に吾等の一物を突っ込んだら、一辺に破れて使い物にならなくなる。だいたいかような山寺に女衒が来るのが怪しい。さてはどこぞの…

稲妻お雪 弐の六

かなり急な石段を喘ぎながら登って行くと、堅牢な山門が見えてきた。二人の法師頭巾が手持無沙汰の様子で、薙刀を担いでこっちを睨んでいる。 「何者じゃ」 片方の弁慶を思わせる巨漢が誰何した。 「へい、越後から来た商人でごぜえやす。今日は娘の出物が有…

稲妻お雪 弐の伍

三太夫は郎党二人を見送りながら、幾許かの寂寥感におそわれていた。若いという事は無鉄砲ながら羨ましくもある。歳をとるといろいろ余計な策を弄して、けっく無駄骨におわる。 ゆっくりと立ち上がって二人の向かった森へ入る。途端に木陰のひんやりとした空…

稲妻お雪 弐の四

「まいないじゃよ。これだけ山吹色を見れば、いかな今川に忠誠心のあつい輩でも、転ばぬ筈はなかろう」 三太夫は自信満々でいった。 「まあ金に転ばない人間は少ないだろうがね。それじゃやって見るか」 お雪はそういうと砂金の袋を一つ担げて脱兎のように走…

稲妻お雪 弐の参

「なんだ。ていの良い盗賊退治を言いつけられてやがら。それで本当にやる気かい」 お雪は弁当をすませ、ふくべの水で口を漱ぎながら聞いた。 「やらざるをえんだろ。我らは上杉家の家臣、長尾様のいいつけとあらば」 「たとえ火の中水の中ってんだろ。ああ主…

稲妻お雪 弐の弐

「お握りを食べてる間に今川の残党の話を聞かせなよ」 お雪は相変わらずぞんざいな言葉使いで三太夫を急き立てた。 「どっちが主か分らんな。まあいい、聞かせてやろう。あと一里ほどいった所に妙信寺という荒れ寺がある」 「分かったよ。その荒れ寺に夜な夜…

稲妻お雪 弐の伍

三太夫は郎党二人を見送りながら、幾許かの寂寥感におそわれていた。若いという事は無鉄砲ながら羨ましくもある。歳をとるといろいろ余計な策を弄して、けっく無駄骨におわる。 ゆっくりと立ち上がって二人の向かった森へ入る。途端に木陰のひんやりとした空…

稲妻お雪 弐の壱

ここまで来たかと三太夫は深編笠を持ち上げて、辺りを睥睨した。 「富士山はやっぱり大きいねえ」 お雪も側で溜息をついた。だが善介は担がされた荷駄の重みにそれどころではない。 「ちっ、駿河の国で富士が見えるのは当たり前さあね」 善介の愚痴をしり目…

稲妻お雪 壱の八

「家康よりこの爺さんの方が、よっぽど大狸だねえ。なんであたいみたいな小娘が、家康の引き出物になるものか。あっ、そうか。分かったぞ。家康の野郎、何かの業病に取り付かれ、陰陽師の御託宣で、若い娘の肝を食えば治るっていわれたんだろう」 お雪は本気…

稲妻お雪 壱の七

「どうやら大殿は信長を覗く布石を打つお考えかと推察いたしましたが?」 直江は黙って頷いた。 その時戸をあけてお雪が入って来た。長い髪を無造作に束ね、小袖を着て、たっつけ袴をはき、腰には短めの刀を差して、もう一端の女侍を気取っている。 「ほう、…

飛びたい

時々、思う。空を見上げては [飛べないのかな?] 建物の屋上を見て [あそこから飛んだら空を飛べるのだろうか・・・?] 時々、思う時が有る。 空を見上げては「飛べないとかな」と。。。 「飛んで何処か遠くへ行きたいな」と。。。 どうしたら飛べるんだろう…

ご紹介

涼子さんが参加することになりました。唐司郎さんのお友だちです。

稲妻お雪 壱の六

「とんでもない買い物をしたと悔やんでござる」 三太夫は滅多に見せぬ弱みを直江だけには、あからさまにしていった。 「ふふふっ、さすがの三太夫も小娘一匹に手を焼いているのか。だかそう悲観したものでもないぞ。早晩かの娘を使う大仕事が舞い込むかも知れん…

稲妻お雪 壱の伍

「これは酷い。これでも春日山ではいい男で通っておりますぞ」 善介はいかにも不足げにいった。 「オジサンよ。鏡を見たこと無いの。猪がせんぶりを舐めたような顔してさ。大方どっかの白首に鼻毛を読まれてやに下がってるんだろ。この助平野郎」 お雪の毒舌…

稲妻お雪 壱の四

善介は驚いて叫んだ。 「まった。旦那は気が短くていけないよ。それでよく乱波が務まるねえ。分かったよ。首が飛ぶのは嫌だから、この娘は預かるよ。その代わりこっちにも条件がある」 江戸時代の主従ではない。利害が合わなければ、何時でもはいさよならで…

稲妻お雪 壱の参

善介はお雪の身体を布で拭いてやりながらいった。 「御家老様だって本当の事をいうとはかぎるまい」 三太夫はこれを聞いて、煙に噎せた 「おいおい、貴様は何故そう頑固なんだ。小野小町確かに色々な書物にあるのは確かだ。小埜家とうのも古代から続く名門だ…

稲妻お雪 壱の弐

お雪を家へ連れ帰り、小者に言いつけて、身体に巻き付けていたぼろ布をはぎ、頭から湯を浴びせた。まるでいもを洗うような扱いであった。 「案外上玉かも知れませんぞ」と、小者が糸瓜でごしごしお雪を洗いながら言った。 なる程、垢の固まりのようお雪の身…

稲妻お雪 壱の壱

応仁の乱からが戦国とすると、もう随分経っている。 信長は本願寺に手を焼いて、鉄張りの軍船を建造していると風の便りに聞こえて来る。 遠く離れた越後では、上杉の殿が管領職に責任を感じて、武田の入道と、川中島で小競り合いを繰り返している。 そんな時…

公徳心

こんな言葉を使うのはもう古い人間でごさんしょうかねえ。 でもスカイツリーの根元を拝見して、ふっとこの言葉が頭を過ったんでござんす。 いくら世界一を自慢したって人間があれじゃあねえ。 立ち小便は夜店を冷やかす時の隠語だけにしてもらいてえや。

シニカルな奴

人間は善か悪か。 あんたどう思う。 俺は断然悪だと思う。何故かって。 それは金を発明して格差をつくったから。 馬鹿らしい。そんな事何千年も前からいろんな哲学がいってるよ。 それより許せんのは神の名のもとに、平気で兵器を使い殺し合いを続けている事…

大人の玩具

刀剣・絵画・仏像・書・焼物・木目込み人形・ブロンズの裸婦・印籠・駕籠槍・馬上筒・ラジコン・ランボーナイフ・アイパット・ディスクトップPC・デジカメ。 以上が私の玩具です。 弟にはガラクタと斬って捨てられました。 えっ、何か忘れてないかって。は…

出来ちゃった

大変だ。お母さんに出来ちゃった。 それは深刻な問題ですな。で、どうするの。 どうするって。今更どうしょうもないでしょ。 それでいいの。 いいのって、あなた何が出来たと思っているの。 モチッ、赤ちゃんでしょ。 パーカッ、そんな事になったらあたいが…

コーヒー

私はコーヒーが好きだ。 通と言うほどではないが、一日飲まないとものたりない。 昔アラブのえらいお坊さんが、という森山加代子の歌を思い出す。 やっぱり歳を感じて、ほろ苦い思いだ。 喫茶店で飲むのと、散歩の途中で自販機で買うのはえらい違いだ。 やっ…

オタク

お宅はオタクですか。 はい、オタクです。 なんのオタクですか。 ウーン、難しいですね。強いて言えば生きて食べてクソをひり、女の裸を見オタクでしょう。 なる程、それでは人は皆オタクですね。