矢車通り~オリジナル小説~

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2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

稲妻お雪 壱の伍

「これは酷い。これでも春日山ではいい男で通っておりますぞ」 善介はいかにも不足げにいった。 「オジサンよ。鏡を見たこと無いの。猪がせんぶりを舐めたような顔してさ。大方どっかの白首に鼻毛を読まれてやに下がってるんだろ。この助平野郎」 お雪の毒舌…

稲妻お雪 壱の四

善介は驚いて叫んだ。 「まった。旦那は気が短くていけないよ。それでよく乱波が務まるねえ。分かったよ。首が飛ぶのは嫌だから、この娘は預かるよ。その代わりこっちにも条件がある」 江戸時代の主従ではない。利害が合わなければ、何時でもはいさよならで…

稲妻お雪 壱の参

善介はお雪の身体を布で拭いてやりながらいった。 「御家老様だって本当の事をいうとはかぎるまい」 三太夫はこれを聞いて、煙に噎せた 「おいおい、貴様は何故そう頑固なんだ。小野小町確かに色々な書物にあるのは確かだ。小埜家とうのも古代から続く名門だ…

稲妻お雪 壱の弐

お雪を家へ連れ帰り、小者に言いつけて、身体に巻き付けていたぼろ布をはぎ、頭から湯を浴びせた。まるでいもを洗うような扱いであった。 「案外上玉かも知れませんぞ」と、小者が糸瓜でごしごしお雪を洗いながら言った。 なる程、垢の固まりのようお雪の身…

稲妻お雪 壱の壱

応仁の乱からが戦国とすると、もう随分経っている。 信長は本願寺に手を焼いて、鉄張りの軍船を建造していると風の便りに聞こえて来る。 遠く離れた越後では、上杉の殿が管領職に責任を感じて、武田の入道と、川中島で小競り合いを繰り返している。 そんな時…