矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

稲妻お雪 弐の壱

ここまで来たかと三太夫は深編笠を持ち上げて、辺りを睥睨した。 「富士山はやっぱり大きいねえ」 お雪も側で溜息をついた。だが善介は担がされた荷駄の重みにそれどころではない。 「ちっ、駿河の国で富士が見えるのは当たり前さあね」 善介の愚痴をしり目…

稲妻お雪 壱の八

「家康よりこの爺さんの方が、よっぽど大狸だねえ。なんであたいみたいな小娘が、家康の引き出物になるものか。あっ、そうか。分かったぞ。家康の野郎、何かの業病に取り付かれ、陰陽師の御託宣で、若い娘の肝を食えば治るっていわれたんだろう」 お雪は本気…

稲妻お雪 壱の七

「どうやら大殿は信長を覗く布石を打つお考えかと推察いたしましたが?」 直江は黙って頷いた。 その時戸をあけてお雪が入って来た。長い髪を無造作に束ね、小袖を着て、たっつけ袴をはき、腰には短めの刀を差して、もう一端の女侍を気取っている。 「ほう、…

飛びたい

時々、思う。空を見上げては [飛べないのかな?] 建物の屋上を見て [あそこから飛んだら空を飛べるのだろうか・・・?] 時々、思う時が有る。 空を見上げては「飛べないとかな」と。。。 「飛んで何処か遠くへ行きたいな」と。。。 どうしたら飛べるんだろう…

ご紹介

涼子さんが参加することになりました。唐司郎さんのお友だちです。

稲妻お雪 壱の六

「とんでもない買い物をしたと悔やんでござる」 三太夫は滅多に見せぬ弱みを直江だけには、あからさまにしていった。 「ふふふっ、さすがの三太夫も小娘一匹に手を焼いているのか。だかそう悲観したものでもないぞ。早晩かの娘を使う大仕事が舞い込むかも知れん…