矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

唐司郎

久米の仙人

娘っ子の脛を見て空から落ったと、笑い者になったが俺は後悔はしていねえ。 男と生れて女に興味が無えのは、影間に違えねえ。 大体ホモとかレズなんて非生産的な奴等に大きな顔をされている、二十一世紀のスタンダードが狂っているのだ。 人口爆発を押さえる…

俳劇

時は夜 季節は夏 舞台には苔むした石垣に囲まれた池 芭蕉登場 扇子を使いながらしばし名目 其処へ蛙がのそのそ現れる 蛙は芭蕉の顔をさも胡散臭げに見上げ其の侭池へドボーン 芭蕉は思わず膝を叩いて叫ぶ 出来た― 池の畔の柳の木に苫っていた夜烏がそれを見…

山桜

春は駆け足 いと短しとおぼゆ なれど美しき山桜の精霊を共のうて微か匂う爽やかなる香り放つもいとおかし 光の君などといえる放蕩者をほ表したる かの阿呆の顔に杉の花粉をまき散らし くさめ鼻水などといえる今流行のやまいをうつし おおいに苦しめたき心な…

春の風邪

風邪をひきました。 馬鹿は風邪をひかない。あれは嘘です。 僕がいい証拠です。 昔はカッコントウ、今は抗生物質、点滴は時間がかかります。 何とも色気の無い文章で申し訳ありません。 嗚呼、桜をあと何回見られますかね。

悪い夢

プレデタ―がハン・ソロと酒盛りをしている。 エイリアンやターミネーターまで、漆黒の空間に浮かんで、ゲラゲラ笑っている。 なんじゃ、こりゃ。 ええ一、ついでにハリーポッターの筆下したらどうだ。 あっ、もうすんでる。早熟じゃのう。さすが聖林。

リフト付レンタル車

中国旅行で一番困ったのは車であった。 リフトの無いバンで、いちいち乗り降りにガイドさんと運転手に手伝ってもらった。 旅行社も良い加減なものだ。初めからこちらは障害者と分かっているのにこの対応だ。 まあガイドさんが日本語ペラペラの良い人だったの…

酷い話

昔の中国 戦に敗れた武将が戦車で遁走している。 矢が雨のように追って来る。敵の軍政も迫っている。 馬もだんだん弱ってくる。このままでは首をかかれるのは必定だ。 そこで武将は御者台に乗っていた息子を無情にも突き落としてしまった。 子供は親が生きて…

蘇州の赤いパンツ

運河沿いを参歩していたら、ランニングシャツに赤いパンツという格好の、白髪をアンちゃんがりにした老人がこっち胡散臭そうに睨んでいる。 何しろ車椅子だからね。それがどうしたって。只それだけのことさ。 でもそれが記憶から消えない。何故なのか分らな…

稲妻お雪 弐の六

かなり急な石段を喘ぎながら登って行くと、堅牢な山門が見えてきた。二人の法師頭巾が手持無沙汰の様子で、薙刀を担いでこっちを睨んでいる。 「何者じゃ」 片方の弁慶を思わせる巨漢が誰何した。 「へい、越後から来た商人でごぜえやす。今日は娘の出物が有…

雪女

驚いたなあ 色の黒い雪女っているんだね 美人ばかっと思っていた俺がバカだった 日本全体が馬鹿化してるんだから仕方ないか 妖怪神社って何じゃ 神が堕落したのが妖怪と広辞苑にあるではないか それを祀るとは何事じゃとオジサン怒ってるぞ 雪女も妖怪の眷族…

初立ち

六十路を越えて、今年初めて立った 恥ずかしい気持と、まだ捨てたもんじゃないという思いが交錯し、複雑である 若い裸体を見ても、あまりときめかないのも悲しい 嗚呼、何か素敵な事はないか 光速を超えて宇宙の果てまで行って見たい 絶世の美女アンドロイド…

愛の鞭

北風がいった 「俺が吹くのは人間に対する愛の鞭だ」 太陽がいった 「そうかね でも人間はちっとも利口にならないね それより私のぬくもりの方が効果があるよ」 それを聞いた北風はむきになってビュウビュウ吹いた でもやっぱり人間は利口にならなかった しか…

此処は何処だ

辺りを見ても全く覚えがない 荒涼とした光景が何処までも続く 夢の中だろうか? それにしては妙にリアルだ 灰色の地面に大きな岩がゴロゴロと転がっている 地平線までその景色は変わらない 空は漆黒で無数の星がくっきりと輝く スーツ(宇宙服)を脱いだら忽ち…

人生は宇宙の窓

何故俺は生まれる以前の記憶がないのか 死んだ後が分からないのか 死後の世界をとく宗教を信じられない 恐らく生まれる前と同じく無だろう では宇宙とは何なのだろう 人生という窓は何の意味があるのだ

可憐な乙女

最近こんな言葉の当て嵌まる女は絶滅した と思い悲観していたのだが、それは私の偏見だった 週に一度、こんなエロオヤジを風呂に入れてくれるヘルパーさん 19歳だそうだが、懸命にやってくれるのだ 仕事と片付けられない何かがある 男の性で見てはいけない…

エイリアンの嘆き

地球へ来て落胆したよ テクノロジーは相当なものだが、やっている政治は五千年前に尋ねた時とちっとも進歩してない 反体制への弾圧はエスカレートしている とくに中国の政府の自信の無さは目に余る 人口が増え、経済は発展して、日本を追い抜いたのに、やっ…

サンタの愚痴

今年もわしの季節がやって来たのう そろそろ準備をはじめなくてはな でもな わしは仕事が嫌になってきたんじゃよ そうじゃろう 子供等はゲームに夢中 わしを信じなくなってしまった 騒いで居るのは商業主義に毒された大人じゃ 引退してラップランドの洞窟に…

となりの宇宙人

へえ、あの可憐な娘(こ)が宇宙人なの アバターに出てくるみたいに青くないよ わざわざこんな地球みたいな辺境にやって来て、ヘルパーをやるとは物好きだねえ しかも唐司郎みたいなエロオヤジの世話をするとは、博愛主義の見本だね 地球の若者に爪の垢を煎…

初冬の煙

山肌に白煙が立ち昇っている 色褪せた紅葉をおくるように 日の光も弱くなった 嗚呼 たそがれた人生 この先幾許のこっているのか 見上げれば木々の枝にかたい蕾が着いている

木枯らしや ダウンとミトンと車椅子 散歩道 コースを悩む 我にあきれ 自販機の 缶コーヒーで暖をとり 落ち葉ふむ 車輪の音が もの寂し

青い花

庭に小さな青い色の花 吸い込まれるように蝶が飛んできた その蝶は何処から来たのだろう 随分遠くから来たのだろう 長い長い旅で ようやく此処までたどり着いた 青い花に甘い蜜を期待して止まる 可哀想に長い旅をしてきたのに 此処に蜜はない 蝶はやがて花落…

〜白い犬〜

僕が散歩に行ったとき 道の駅は小雨だった 色々な草や石楠花が咲いていた 散歩に行ったとき白い犬がいた こんな大きな鼻を摺り寄せてきた 初めて会ったのに尻尾を触って人懐っこいのに驚いた セラピー犬になればいいと思った

八上姫小唄

わたしゃ因幡の八上姫 大黒様に絆されて 勇んでいった出雲だが 居たのは本妻稲田姫 散々いびられ逃げ帰り 涙ながらに袖を振る

年女

ああ あなた なんと寅はしらなんだ 随分長い文通相手なのに でも近頃の四十路は若いなあ ディズニーシーでもまるで少女でした 今年はトラみたいに雄雄しく頑張れえ いけねえ あなたは雌でした ゴメンなさい

無題

年の暮れ おもうは残りの 日日かな 今一度 会いたい友や 江戸の町

残り柿

冬枯れの野にポツンと立つ柿の木 その枝に一つ残った熟れた実 小鳥のために残すというが、そおいう易しさ今はない ああ 田んぼの中の鷺、木枯らしを浴びつつ、笠地蔵の頃を懐かしむ

聖夜の宴

神様 何ゆえ私をお選びになったのでございます。 まだ愛の喜びを知らぬ処女に陣痛の痛みだけ味合わせるなんてひどい。 嘘をつけ。いくら全能の神でも、精子が膣を越えて子宮に入らんと懐妊はさせられんわい。 マリア、何処で誰と悪戯をした。 きりきり白状に…

月の砂漠

漆黒の空に青い地球がぽっかり浮かんでいる。 夢にしてはリアルすぎる。 空気がないのに生きている。 背広を脱いで肩にかけ、静かの海をトボトボと歩いている。 なぜ俺はこんな所にいる。 向こうからローバーが埃を巻き上げて走ってくる。 おーいと俺は手を…

乱れ髪

貞子さん 貴女は何時まで井戸の中に居て、時々テレビの画面からはい出して、人を呪い殺す気なんです。 いい加減に諦めて、成仏したらどう。 「余計なお世話だよ。あたしが成仏しちまったら三文作家の木乃伊が出来る。それに映画会社が困るだろ。これでも随分…

女の港

霧に咽んで霧笛を聞けば、あの人待ってる私は馬鹿ね 今に今にと六百光年 今じゃすっかり錆付くガントリイー 船は何処ぞで沈んだか ガミラス軍の攻撃受けて ヤマトに乗り込むセーラーマン 彼の姿が宇宙「そら」に浮かぶ 幻見るよじゃ永くはないな 松本零士氏…