矢車通り~オリジナル小説~

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アレクサンダーテクニーク

 Alexander-tech Studio Tokyoさまのワークショップに行ってきました。
 午前9時30分〜午後12時30分までと午後1時30分から4時30分までです。
 午前中は「アレクサンダーテクニーク」とはいかなるものか、その歴史と原理を学びました。

 まずは、歩きました。
 自分のやり方でどんどん教室の中を歩きます。
 歩き方を意識してみて、自分で気がついたこと、他人の歩き方を見て気がついたことを発言します。
 
 「アレクサンダーテクニーク」の詳しい解説は、先にご紹介したホームページの「アレキサンダーテクニックに期待できること」を参照していただいたほうが正確に伝わると思いますので割愛させていただきます。

 私は目的地に急ごうとして、体が前のめりになり、胸だけが突き出していき、足がようやくあとから付いていく。
 といった、歩き方をしているということが、ワークショップが経過していくごとに明らかにされていきます。
 座るときは、まず、 座骨を椅子の座面につけて、背骨をひとつひとつ自然に積み上げていき、首まで積み上げて、その上に頭蓋骨を乗せます。骨格に従って自然な姿勢をしているので、どこにも力を入れる必要はないはずなのですが、昔、椎間板ヘルニアを患ったので座ろうとすると腰のあたりの筋肉に力を入れて骨をかばおうとします。不必要な力の入れ方でかえって自然で楽な姿勢を妨げるので、力を抜きます。頭は重いという意識があるので、しっかり支えようと思って首の後ろに力を入れています。
 講師の細井先生の手に導かれて、余分な力を入れていない姿勢になりました。
 その姿勢はどこにも無理な力が入っていないので楽なのですが、普段使わない筋肉を使っているので、だんだんつらくなってきます。そのうち姿勢が崩れて、いつもやっている姿勢になります。慣れているので楽な気がするのですが、不必要な筋肉が使われていることを意識してしまうので落ち着きません。
 次に立ち姿です。
 足の裏をべたっと地面につけて、肩幅くらいに開き、足腰背中と積み上げていき、頭を乗せます。
 細井先生に導かれた姿は、主観的には「猿になったように」思えました。
 つまり、膝が曲がり腰が落ち胸が丸まり手が前のほうへ出ているように思えたのです。ほかの方のご意見をうかがってみると、その姿勢で「まっすぐ自然に立っているように見える」のだそうです。私自身が「まっすぐ」だと思っていた姿勢は胸が突き出ていて、手が後ろにあり、まるで、ペンギンが歩いているようだった、みたい、です。
 最後にまた歩きました。
 自分の姿勢を意識して歩いてみると、なんだか体が軽くなって視界が明るくなったような気がします。余分な力が抜けて筋肉が楽になった分、筋肉が殻を形作っていた部分がなくなり、柔軟に動けるようになったのでした。

 とはいえ。

 一朝一夕で覚えられるものではありません。
 今も、パソコンの前に座りながら「えーと、座骨の上に座るんだから……」と自分の体を調整しています。どこかにもたれかかるより、まっすぐ体を立てていたほうが楽になってきました。
 なんだか、親指シフトを覚えたときに似ています。
 私はもともと「かな入力」でワープロを打っていました。小説を書くようになって原稿用紙にして20枚から30枚くらい打つことも多くなってきました。長文を打っていると「かな入力」では、左手の小指が攣るんです。よく使う字が、左手の小指に割り当てられているのです。「親指シフト」なら、よく使う文字は人差し指という使いやすい指に割り当てられていますので楽に打てるんです。頭ではわかっていても、同じキーを、そのまま打つのと、左親指キーを押しながら打つのと、右親指キーを押しながら打つのとでは出てくる文字が違う、ということに慣れるのに、45時間かかりました。あまりに面倒で、もう、いっそ、「かな入力」に戻っちゃおうかと思ったのですが、それでは長文を打てないのはわかっていますから、我慢して「親指シフト」を続けました。すると、あるとき、フッと楽になったんです。頭で考えたのと同じスピードで文字が出てくるようになりました。そうなるとしめたもの。どんどん練習して早く楽に打てるようになりました。

 「アレクサンダーテクニークに沿った体の使い方を覚えること」も、たぶん、とてもイライラする大変な作業になると思います。でも、いったん身につけてしまえば、その後、ずっと不必要な力みで自分の能力をそこなうことのない体の使い方が出来るので、楽に今まで以上のことが出来るようになるだろうと思いました。