矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

「薄黒」を見てきました。

 LifeRsさんの公演です。

 田原町の出口1で友人と待ち合わせていました。狭い階段を上がりきると、大きな道路の歩道に出ました。小雨模様です。20分ほど待つようなので、待機場所はないかとあたりを見回すと、ちょうどビルの入り口のシャッターが閉まっており、90センチ四方のくぼみが出来ていました。入ってみるとすっぽりはまります。雨がかからないので快適です。
 目の前を高校生が何人か通りかかりました。
「うおっっっ」と私を見てのけぞります。言っておきますが、私の外見はいたって普通のおばさんであり、けっして、一目見るなり怪しまれるような格好はしておりませんっ。
「はあああ、びっくりしたあ」
 子供は礼儀知らずです。何も指ささなくともと思っていたら、今度はハイヒールのお姉さんがのけぞりました。中年のおじさんものけぞりました。さすがに、やばいと感じ始めました。
 ちょっと深く入り過ぎており、私の目の前まで来て、ようやく通行人が私に気がつくらしいのです。ですが、こちらも雨を避けているのですから、どうにもなりません。待ち合わせ時間の5分前になったので、友人にメールを打ちました。
田原町に着きました。出口1を出てビルの凹みに入っているので、みちゆくひとにギョッとされてます)
 ほどなく、友人が首をひねりつつ携帯電話を片手に上がってきました。私の状態を見たとたん「ああ、なるほど」と納得。すっぽりはまっていたようです。

 うろうろすること10分。普通のビルの入り口に看板があるのを見つけて訊ねてみると、会場は確かにこことのこと。雑談しながらしばらく待ちました。
 
 やがて開場。
 おしゃべりの続きは中でと思っていたら、客席はたぶん全部で15席ほど。真ん中で黒猫を朗読している人がいます。客ではないでしょうから、役者さん。出演者が客席に座っていることはよくあることですが、大声で朗読を続けていることはあまりありません。よく見るのは普通にお客みたいな顔をして座っていて、時間になるとおもむろに舞台に出て行くとか。
 客席が途切れた先に、男が一人立っています。裸足なのだから役者さんなのでしょう。
 私は上演前には必ずトイレに行くくせがあり、会場の奥にあると聞いていたので、ちょっと困りました。全部で1時間ほどと聞いてもいたし我慢しても良かったのですが、行きにくいとなると行きたくなるんですよね。受け付けの方にうかがい、舞台の方に導かれ、用を済ませて戻ってきました。
 朗読が終わり、舞台の上に居る方と、客席に居る方の対話が始まります。
 どうやら、2人で黒猫の読み方について討論しているようです。
 さて、ここで、私は「自分のポジション」について悩みました。出来ている場は「討論」なのだから、実は参加してもいいのかなあ? わからないことがあったら「そこのところ詳しく」とかツッコンでもよろしいのかなあ? いや、先がわからないのだから、ここはおとなしく「討論を鑑賞している客」のポジションにいるべきか? それとも、通行人らしく議論する2人から顔を背けているべきか?
 と、こんな風に考えて笑い出してしまいました。いったい、私は何を基準に「べき」とか考えているのでしょう? 私は観劇に来ており、芝居が始まっているのだから、見ればいいのです。
 初めて、朗読をしている男をよく見ました。きゃあ、イケメンッ。
 いや、それより、舞台で話している男の声が、よく響いています。いわゆるα波が出る声で、森本レオの声を思い出しました。

 で、突然のレポート中断で申し訳ありませんが、ここから先は解説不可能です。寺山修司とか別役実とか唐十郎とか、いろいろと思い出しはしたのですが、先達を継承しているわけでもなさそうですし。
 どこがどう面白かったのかを、言葉にするすべがありません。
 とりあえず、宮本 荊さんの声を聞きに、また、行こうと思いました。