2012-03-28 山桜 唐司郎 掌編 春は駆け足 いと短しとおぼゆ なれど美しき山桜の精霊を共のうて微か匂う爽やかなる香り放つもいとおかし 光の君などといえる放蕩者をほ表したる かの阿呆の顔に杉の花粉をまき散らし くさめ鼻水などといえる今流行のやまいをうつし おおいに苦しめたき心なり ほんに女子の悋気と加茂川の水ほど 始末の悪きものはなしとおぼゆ わらわも又その鬼が住むと思えば 空蝉のごとく人の身体をぬけ 春風になりたき心と察し下されたくそうろう