2012-04-27 月の雫 唐司郎 掌編 初夏の夜、男は女を誘って蛍見物としゃれ込んだ。 そぞろ歩いている足下には緑の炎が、燃えるように蛍が輝いている。 月の光が負けそうだ。 ラブコールは蛍の方が素晴らしい、と思う。 でももし人間が蛍のように光ったらどうだ。薄気味悪いだろうな。 B級のホラー映画だ。 あっ、思ったとうり男が女を草むらに引き入れて、恒例の行事が始まった。 女が手近な草の葉をちぎって月の雫を拭っている。 わりあい淡白な連中だ。 覗き男の一人言。