矢車通り~オリジナル小説~

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2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

遣唐使の園

庭に色とりどりの牡丹が咲き乱れ、真っ青な空に極楽鳥が舞う僧達は柳の下で一時のまどろみを楽しむ。 だがその中の一人だけは懐紙に筆を走らせる。 共の僧はそれを横目で睨む。『あいつは俺らがこうして怠けているのを腹の中で笑っているのか』経文を丸覚え…

命の足跡

蝉の抜け殻が落ちていた。夏も終わりだ。もうすぐ秋になる。秋刀魚のにおいが鼻をつく。紅葉が一斉に赤く色づく。黄色の銀杏がぱらぱらと散ってくる。蝉の魂よ、安らかに眠れ。また十年後に会おう。