矢車通り~オリジナル小説~

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2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

稲妻お雪 参の参

「おーい、御坊達。そのようよな小童を相手にせず、これを見てくれ」 三太夫は大声で叫びながら、砂金を見せるように袋を振った。 「チェ。余計なオヤジが余計な所に現れやがった。これから面白くなろうって矢先によ」 お雪は又一人、荒法師を血祭りに上げな…

稲妻お雪 参の弐

「物事おまえさんの思う通りに行けば目出度いがな」 善介は溜息をついて、それでも脇差をひきぬいた。 「目出度いのはおまえ達じゃ。この人数にたった二人で歯向かうとな。さいわい此処は寺じゃ。僧もおるし墓も腐るほどあるぞ。安心して冥土へ行きくされ」 …

稲妻お雪 参の壱

お雪を見て荒法師どもは怒るまいことか、善介の襟首を締め上げ、今にも縊り殺す勢いである。 「まだ子供ではないか。かような者に吾等の一物を突っ込んだら、一辺に破れて使い物にならなくなる。だいたいかような山寺に女衒が来るのが怪しい。さてはどこぞの…

稲妻お雪 弐の六

かなり急な石段を喘ぎながら登って行くと、堅牢な山門が見えてきた。二人の法師頭巾が手持無沙汰の様子で、薙刀を担いでこっちを睨んでいる。 「何者じゃ」 片方の弁慶を思わせる巨漢が誰何した。 「へい、越後から来た商人でごぜえやす。今日は娘の出物が有…