携帯電話のディスプレイには神田春子と出ている。予定通り。それでも通話ボタンを押すのに十秒かかった。 「夕べ、隆正の背広から待ち合わせのメモを見つけたの」春子の声だ。 「紀美代の字だったわ。ホテルの名前」 春子は今なんとか声を絞り出しているのだ…
ドアを開けようとした、おれの手が止まった。 「順調です。医者の手が必要な出産なんて7人に1人なんですよ。6人は医者なんていなくても平気なんです。女性はつくづく丈夫だと思いますよ。出産に耐えられるんですから。男だったらショック死しかねませんよ…
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