矢車通り~オリジナル小説~

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案山子の一人ごと

俺は案山子 黄金色の穂波をすずめ達から守っている。
しかし、報われない仕事だなあ。
いくら一生懸命仕事をしたって最後はボロ布のように捨てられてしまう。
人間達の勝手さは昔から変わらないが、最近の横暴さは目に余る。
科学の力を過信して自然を操る気でいるから始末が悪い。
農薬をやたらに使うからイナゴや赤とんぼがいなくなった。
山の上から降りてくる紅葉もこのごろめっきり悪くなった。
おばさんが犬を散歩させている。あぜ道に彼岸花が真っ赤に咲いている。
血のようなその色は不吉な感じだ。
墓の周りに人間の死体を養分として咲くという。
まあそんな俗説は信じちゃあいないがね。
なんとなく未来を象徴しているようで背中がうそ寒くなってきた。
案山子の俺がこんなことを思考したってこっけいなだけか。
ああ里の秋。