2009-10-08 野分けの頃 唐司郎 掌編 湿った空気が絡み付く 葦原を盗賊が走る 小脇に赤いものを抱えている 女だ それもまだうら若い どこぞの大臣の姫か 突然目の前に鬼が大手を広げて立塞がった 盗賊は野太刀を振るって立ち向かった 数合渡り合ったが鬼に適う筈がない 頭からバリバリと食われてしまった 姫はしなを作って鬼を誑し込んだ そして隙を見て懐剣を鬼の肝に突き刺した 空には黒雲が飛ぶように流れて行く