矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

野分けの頃

湿った空気が絡み付く
葦原を盗賊が走る
小脇に赤いものを抱えている
女だ
それもまだうら若い
どこぞの大臣の姫か
突然目の前に鬼が大手を広げて立塞がった
盗賊は野太刀を振るって立ち向かった
数合渡り合ったが鬼に適う筈がない
頭からバリバリと食われてしまった
姫はしなを作って鬼を誑し込んだ
そして隙を見て懐剣を鬼の肝に突き刺した
空には黒雲が飛ぶように流れて行く