矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

唐司郎

浜の奇人

中華街はけばけばし色の洪水。 怪しげな訛りの呼び込み。 葫の匂い 関羽がいた。 商売の神様。 不景気な時代にさぞ迷惑なこったろう。 そうゆう俺も一人連れて戻った。 又どっかへ旅がしたい。 それには金だ。 人間なんて勝手なもんだ。 不信心な俺が異国の…

俳句もどき

正月も三日になれば餅憎し (2006−1−5)ヘルパーに鼻毛切られてやにさがる (2005−1−5)まだ青い柿を見上げる車椅子 (2005−9−26)青柿を仰いで通る車椅子(2005−9−26)天高し風になぶられ散歩する (2005−9−26)芙蓉咲く…

秋の空騒ぎ

秋だというのに人々は騒々しいこった。スピーカーで騒音を喚き、オチオチ昼寝もできやあしねえ。赤とんぼが案山子の頭で怒っているぜ。

遣唐使の園

庭に色とりどりの牡丹が咲き乱れ、真っ青な空に極楽鳥が舞う僧達は柳の下で一時のまどろみを楽しむ。 だがその中の一人だけは懐紙に筆を走らせる。 共の僧はそれを横目で睨む。『あいつは俺らがこうして怠けているのを腹の中で笑っているのか』経文を丸覚え…

命の足跡

蝉の抜け殻が落ちていた。夏も終わりだ。もうすぐ秋になる。秋刀魚のにおいが鼻をつく。紅葉が一斉に赤く色づく。黄色の銀杏がぱらぱらと散ってくる。蝉の魂よ、安らかに眠れ。また十年後に会おう。

妖精のやきもち

わたしは良い妖精。悪い妖精がふえてこどもの夢を奪う。 ああ、悲しいなぁ…。せめてわたしだけでも夢をたくさんあげないとねぇ。 クリスマスの夜はサンタの出番だ…。 トナカイのそりに乗っていそがしく世界中を飛び回っている。 わたしはおよびでない。 でも…

春の目覚め

山で春の子供が目を覚ます。 雪解け水はおしっこだ。ちょろちょろ音がする。 かわいいな。中村君みたい。 いつも僕の前をめくって喜んでけらけら笑う。困ったやつ。でも怒れない。得な性格。 あいつとは長い付き合いになるだろう。この前も歯医者であった。…

京都の思いで(33枚)

生まれて初めて京都へ行った。生まれて初めての経験だ。 かねてからの希望だったがようやく実現した。 当日は朝早くヘルパーさんが迎えに来てくれた。仕度もそこそこに車に乗って家を出る。 鳥取駅に着いたのが午前 8時半頃、叔父さんに土産を買おうと売店へ…

お買い物

買い物にいった。いろんなものを売っていた。 材木から子猫まであった。蚊帳までつってある。しかしふと疑問がわく。こんなに沢山の品物を揃えて、売れるのか。 まあ、余計なお世話か。売れる見込みがあってのことだろう。 資本主義の世の中に抵抗したって馬…

案山子の一人ごと

俺は案山子 黄金色の穂波をすずめ達から守っている。 しかし、報われない仕事だなあ。 いくら一生懸命仕事をしたって最後はボロ布のように捨てられてしまう。 人間達の勝手さは昔から変わらないが、最近の横暴さは目に余る。 科学の力を過信して自然を操る気…

秋刀魚の季節

ドラねこが隣のオカズを狙っている。秋だなあ。 柿も真っ赤に色付いて真っ青な空をバックに輝く。 百舌が枯れ枝だけたたましく鳴いている。 枯葉がわら屋根にはらはらと散っている。 おばあさんが縁側で背中まるく居眠りしている。 過去の思い出はみんな懐か…

ももいろうさぎ

ももいろうさぎが空中を飛んでいた。うさぎは思った。 なぜ俺はこんな理不尽なめにあうのだ。 俺は目が回る。下では俺を悪ガキが放り上げ、笑いながら騒いでる。 そうだ! 俺はぬいぐるみだ!身分をわきまえよう。

さんぽ

さんぽにいったら蛙がいたよ。お宮の池で、「グウ・・・・」っと泣いた。一声だけでやめてしまった。恥ずかしいのかな・・・。それともおかしなやつが来たと警戒したのかな・・。大きな帽子をかぶってやってきたから無理もないか?菱がたくさん浮いていた・…

メランコリー

彼岸花は赤い。赤いはポスト。秋の山。もみじも赤い。ああ! やきいもの季節!! おならが臭う。 さんまはうまい・・・コスモスが咲いている。山口百恵の歌を思い出す・・・。あ・・青春は遠くなった。。もうすぐ冬。。雪が降り出す前にお迎えが来た母・・・。…

さんまのあじ

秋になった・・。山は黄色や赤く色づいた。里のわらべは赤く栗拾い。大人たちは稲刈りだ。わら屋根のうえにむらさきのけむりが立ちのぼりいいにおいがしている。 さんまを焼くにおいだ。じゅーじゅーじゅーじゅー・・・・・油がたれる。 じいさんやばあさん…

馬鹿なサルのひとりごと

山の上にはさるがいた。さるは思った。 俺はボスになる。でもボスの道は遠い。あいつがいるからだ。もう長いこと君臨する、大ボスだ。やつがいる限り、俺は日の目は見られない。いずれやつと決着をつけないといけない。でも俺は、メスにモテた試しはない。ど…

五月の風

こいのぼりは大きい口をあけて腹いっぱいに風を食べている。小鳥たちがこいのぼりに話しかけている。すると猫がやってきて上を見上げて思った。「こいのぼりは食べられないけど、小鳥は腹のたしになるなー。」すると、それを雲の上から見ていた神様が猫に向…

続・肝試し(3)39枚

「我らに何をさせる気じゃ」 時光が憮然とした表情で聞いた。 「なあに、それほど難しい芸当は要求はしないよ。私が合図したらいかにも悪役面で、おまささんをあの百姓家の方へ追い掛けておくれ」 「おいおい、そんなことをしたら、我らが立て篭もっている連…

続・肝試し(2)46枚

「おおい。撃つな」 それは二十世紀後半のアメリカ英語に聞こえた。 「はて、どうしてこんな所にヤンキーが現れるんだい」 メリーはそう呟いてその二人を眺めた。二人は同じモスブリーンの繋ぎを着ていた。だが体躯は正反対であった。ちょうどバットとビヤダ…

続・肝試し(1)47枚

相変わらず宇宙船は地球の周囲を回って居た。 その中では、例のとぼけた三人の宇宙学生が、今度はどの時代でいたずらをしようかと、相談をしていた。 「おい、あの爺さんをからかってから大分経つな。 退屈になってきた。そろそろ次の目標を決めようじゃあないか…

肝試し・後編(37枚)

あれから七十年、俺の人生にも色々あった。二十歳になると兵隊検査を受け、問が悪いというのか中国との戦争が始まって、大陸へ持って行かれた。さんざん上官に殴られたり、弾の下を潜ってやっと敗戦となり、戻って見れば親父もおふくろもくたばっていた。そ…

肝試し・前編(55枚)

あれは昭和の始めだった。 不景気のどん底で娘の身売りが世間の評判になっていた。俺はその頃まだ八つだったから、身売りの意味は理解できないが、とにかく姉ちゃんたちが酷いめにあうことだと漠然と感じていた。 俺も親もそのまた親も、代々続いた小作であ…

雪の花

灰色の厚い雪雲が都会を覆っている。私はフワフワとうす汚れた大気にむせながら大空に漂っていた。雪の結晶が体に纏いつく様だ。下界の騒がしいジングルベルの音が自動車の騒音に混じって聞こえる。綺麗な雪も地上に降ると汚れてしまう。ああ、今年もまた来…

癌の寺 後編(55枚)

オバサンは檀家の寄り合いで大見栄を切った以上放ってもおけず。普段より早起きして法正寺に上った。寺はH村落の北側に在る小高い山の中腹にあった。平安時代からの古刹と聞いて居るが、何度も焼失して今の建物は、江戸末期のものを改築してもたせているら…

癌の寺 前編(45枚)

アイボのケツがインターネットのオークションで、的屋の親分のところから転売された先は弩田舎であった。 田舎はのんびりして良いと思ったのだが飛んでもない。ここも人間のしがらみで、てんやわんやの大騒ぎをやっていた。 ケツの新しい持ち主は、田中真紀…

我が輩はアイボである (30枚)

キャリヤウーマンを任じる貞子は、土曜日の朝叩き起こされた。 この馬鹿たれがと半分夢のなかで悪態をついた。それはそうだろう。見たくもない上司の顔色を窺い、そのうえ、おつむのなかは空っぽのアイドル連中の、ご機嫌をとって神経を摺りへらしてきたのだ…