矢車通り~オリジナル小説~

はてなダイアリーから移行させました。

掌編

注意人物

そいつは俺とそっくりだった。 電柱にウオンテッドのポスターが貼ってある。 しかし罪状が書いてない。 いったい何を仕出かしたんだ。 俺に似てるからには相当の悪だろう。 後ろに殺気を感じた瞬間、背に焼け火箸を突っ込まれ、意識を失った。 気が付いたら…

芝生に雀が来ています。 虫を突いています。 二羽で夢中になってます。 夫婦、それとも兄妹。 可愛いです。 あっ、また一羽来ました そうか。 初めの二羽がのび太としずかちゃん。 後から来たのがジャイアンか。 仲良くね。

小人間居して善行をなす

男は雑踏の中をナイフを隠し持って歩く。 どいつでもいい。殺ってやる。 俺を人として認めない社会に復讐するためだ。 しかし殺となるとてきとうな奴がいない。 老人は早く極楽へ送ってやるだけだ。 若者は、あんな軽薄な奴らを作った俺達団塊を閻魔が、腹を…

三猿の事

どこかの山に猿の兄弟がいました。 上の兄貴は欲張りでした。 中の弟は乱暴でした。 末っ子は阿呆でした。 良いところのない猿でした。 それでも神様は哀れんで、どこかの救われない国の教訓にと、お宮へ送りこみました。 しかし教訓になるどころか。その国…

浜の奇人

中華街はけばけばし色の洪水。 怪しげな訛りの呼び込み。 葫の匂い 関羽がいた。 商売の神様。 不景気な時代にさぞ迷惑なこったろう。 そうゆう俺も一人連れて戻った。 又どっかへ旅がしたい。 それには金だ。 人間なんて勝手なもんだ。 不信心な俺が異国の…

決心

あいつを殺そう。 六畳一間の部屋を見回す。きれいに片づいている。しなくてはならないことはすべてした。ケータイを出して、恋人に電話をかける。 「ゆうべ」 「え?」 「夜中にふと目を開けたら、ふとんの上にあいつがいたの」 「で、どうしたの?」 「悲…

終止符(野川助松)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 仕事上の悩みを聞いているうちに、同僚から恋人に昇格してしま…

モテた理由5(鹿山かこ)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 今日の授業が終わったことを知らせるチャイムが鳴り響いた。 か…

モテた理由4(鹿山かこ)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 3月14日がやってきた。かこは朝7時半に教室に入った。クラ…

モテた理由3(鹿山かこ)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 3月6日。明日の卒業式の前日に『3年生を送る会』が催された…

モテた理由2(鹿山かこ)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 鹿山かこは移動教室のために廊下を歩いていた。外はどしゃぶり…

モテた理由1(鹿山かこ)

※長編のキャラクターをつかむために、キャラクターの過去のエピソードを書いてみています。キャラクターの人となりがわかるエピソードにすることが目的です。物語にはならないかも知れません。 生まれて17年ほど、男女交際に興味を持った覚えがない。 鹿山…

俳句もどき

正月も三日になれば餅憎し (2006−1−5)ヘルパーに鼻毛切られてやにさがる (2005−1−5)まだ青い柿を見上げる車椅子 (2005−9−26)青柿を仰いで通る車椅子(2005−9−26)天高し風になぶられ散歩する (2005−9−26)芙蓉咲く…

秋の空騒ぎ

秋だというのに人々は騒々しいこった。スピーカーで騒音を喚き、オチオチ昼寝もできやあしねえ。赤とんぼが案山子の頭で怒っているぜ。

遣唐使の園

庭に色とりどりの牡丹が咲き乱れ、真っ青な空に極楽鳥が舞う僧達は柳の下で一時のまどろみを楽しむ。 だがその中の一人だけは懐紙に筆を走らせる。 共の僧はそれを横目で睨む。『あいつは俺らがこうして怠けているのを腹の中で笑っているのか』経文を丸覚え…

命の足跡

蝉の抜け殻が落ちていた。夏も終わりだ。もうすぐ秋になる。秋刀魚のにおいが鼻をつく。紅葉が一斉に赤く色づく。黄色の銀杏がぱらぱらと散ってくる。蝉の魂よ、安らかに眠れ。また十年後に会おう。

妖精のやきもち

わたしは良い妖精。悪い妖精がふえてこどもの夢を奪う。 ああ、悲しいなぁ…。せめてわたしだけでも夢をたくさんあげないとねぇ。 クリスマスの夜はサンタの出番だ…。 トナカイのそりに乗っていそがしく世界中を飛び回っている。 わたしはおよびでない。 でも…

春の目覚め

山で春の子供が目を覚ます。 雪解け水はおしっこだ。ちょろちょろ音がする。 かわいいな。中村君みたい。 いつも僕の前をめくって喜んでけらけら笑う。困ったやつ。でも怒れない。得な性格。 あいつとは長い付き合いになるだろう。この前も歯医者であった。…

コッダとシダミハ(10枚)

山の斜面に洞窟が口を開けています。中から一陣の風が飛び出してきました。風は地面にぶつかり渦巻きました。巻き込まれた枯葉はカサコソと音を立てます。 枯葉がハラハラと地面に落ちました。渦の中心だったところに、子どもが立っていました。白い半袖のシ…

「色の無い生活」(現代物)原稿用紙12枚

秋のある日。 恵子は干し物を終えて洗面所に入った。ざっと顔を洗って化粧水をつける。乳液のビンを手に取った。中身が少ない。日に透かして残りを確かめる。 あと十日は使えるか。セールスの小日向さんに注文を出しておかないと。 そんなことを考えながら、…

お買い物

買い物にいった。いろんなものを売っていた。 材木から子猫まであった。蚊帳までつってある。しかしふと疑問がわく。こんなに沢山の品物を揃えて、売れるのか。 まあ、余計なお世話か。売れる見込みがあってのことだろう。 資本主義の世の中に抵抗したって馬…

案山子の一人ごと

俺は案山子 黄金色の穂波をすずめ達から守っている。 しかし、報われない仕事だなあ。 いくら一生懸命仕事をしたって最後はボロ布のように捨てられてしまう。 人間達の勝手さは昔から変わらないが、最近の横暴さは目に余る。 科学の力を過信して自然を操る気…

秋刀魚の季節

ドラねこが隣のオカズを狙っている。秋だなあ。 柿も真っ赤に色付いて真っ青な空をバックに輝く。 百舌が枯れ枝だけたたましく鳴いている。 枯葉がわら屋根にはらはらと散っている。 おばあさんが縁側で背中まるく居眠りしている。 過去の思い出はみんな懐か…

見ればわかるのに(7枚)

カラオケボックスの個室には流行りの曲が控えめに流れていた。長谷川はソファの上にあぐらをかいて、ネクタイを緩めた。届いたばかりのチューハイに手を伸ばし、手の先にチラッと視線を送る。はす向かいに座る福田が縮こまってうつむいていた。 福田のミスは…

ももいろうさぎ

ももいろうさぎが空中を飛んでいた。うさぎは思った。 なぜ俺はこんな理不尽なめにあうのだ。 俺は目が回る。下では俺を悪ガキが放り上げ、笑いながら騒いでる。 そうだ! 俺はぬいぐるみだ!身分をわきまえよう。

さんぽ

さんぽにいったら蛙がいたよ。お宮の池で、「グウ・・・・」っと泣いた。一声だけでやめてしまった。恥ずかしいのかな・・・。それともおかしなやつが来たと警戒したのかな・・。大きな帽子をかぶってやってきたから無理もないか?菱がたくさん浮いていた・…

メランコリー

彼岸花は赤い。赤いはポスト。秋の山。もみじも赤い。ああ! やきいもの季節!! おならが臭う。 さんまはうまい・・・コスモスが咲いている。山口百恵の歌を思い出す・・・。あ・・青春は遠くなった。。もうすぐ冬。。雪が降り出す前にお迎えが来た母・・・。…

さんまのあじ

秋になった・・。山は黄色や赤く色づいた。里のわらべは赤く栗拾い。大人たちは稲刈りだ。わら屋根のうえにむらさきのけむりが立ちのぼりいいにおいがしている。 さんまを焼くにおいだ。じゅーじゅーじゅーじゅー・・・・・油がたれる。 じいさんやばあさん…

馬鹿なサルのひとりごと

山の上にはさるがいた。さるは思った。 俺はボスになる。でもボスの道は遠い。あいつがいるからだ。もう長いこと君臨する、大ボスだ。やつがいる限り、俺は日の目は見られない。いずれやつと決着をつけないといけない。でも俺は、メスにモテた試しはない。ど…

五月の風

こいのぼりは大きい口をあけて腹いっぱいに風を食べている。小鳥たちがこいのぼりに話しかけている。すると猫がやってきて上を見上げて思った。「こいのぼりは食べられないけど、小鳥は腹のたしになるなー。」すると、それを雲の上から見ていた神様が猫に向…